国際観光都市・神戸で観光学を学ぶ大学。 観光文化学部 観光文化学科
9月25日にリッツカールトン大阪で開催された第2回「観光・大学フォーラム」のあと、ザ・リッツ・カールトン・ホテル日本支社支社長の高野登氏と渡瀬信之学長との対談が、別室で和やかに行われました。
対談の模様を一部要約してお伝えします。
渡瀬:高野さんの講演は中味が濃く、共感できるお話でした。大学は学問を究めるアカデミックな場とよく言われますが、わたしは人間を形成する場であると考えています。「学生第一主義」を基本理念に、目指すのはこれまでの指導教育から脱却した新しい大学です。その意味でも本日のお話は大変心強く、励ましになりました。
高野:ありがとうございます。人間形成や人材育成というのは非常に大切ですね。ホテルは人材集約型産業ですから接客の比率が非常に高く、それだけにホスピタリティが求められます。ですから、人材をどのようにして育てるかというところに、すごく時間をかけるのです。大切なのは、どんなホテルが必要か、どんなホテルが喜ばれるかを、一人ひとりが自分の中の課題としていつも考えることです。それは、どうすれば自分が社会に必要とされる人間になれるかという、社会との接点を自分で具体的に考えることにもつながってきます。これを職場ではなく、プライベートな自分の時間を使ってやるのです。たとえば、電車の中で優先座席を意識して、高齢者や障害者の方がいないか気を配ってみる。1日に何回、相手になにかを譲ることができたか、人にしてあげることができたか、そんなことを最初は半ば強制的に考える癖をつけさせるのですね。
渡瀬:なるほど、それは大学でも実践できることですね。
高野:できます。ただ、自分自身の力だけではなかなか実践できません。でも、外的な力で考える習慣をつけることはできます。リッツカールトンでは、世界中に約4万人いる従業員に仕組みの中で考える習慣をつけてもらいます。自然発生的には不可能なんですね。仕組みを作ることが最初のステップです。さらに社内では「オーガナイズされたカオス」と呼んでいますが、一つのところに落ち着いてしまわないように、安住してしまわないように、できあがった仕組みを壊すことにしています。安定期になると壊す、それをくり返します。だから、安定期がない。意識的に、常にカオスをつくりだす。大学も同じかもしれませんね。
渡瀬:神戸夙川学院大学は開校したばかりですし、規模もそれほど大きくありませんので、大学の特色を出していくのに適したサイズと環境があると私は思っています。
高野:そうですね。たとえば、教授・准教授が日本でいちばん教えたいと思える大学があってもいいと思います。リッツも他企業からの転職者で、前職より年収を減らして来る人も多い。おもしろいからリッツへ行きたい。それに、東京のリッツではホテル経験のない人も随分といます。この大学へ行けば、おもしろい。そんな熱が伝わってくることも大切なのではないでしょうか。
渡瀬:学生たちは動機や目的がそれぞれに違いますし、企業や社会に対するリアリティがありません。その点を踏まえて、彼らに社会で通用する意識をどう形成していくのかも、重要なことです。
高野:何を学びたいか、何がしたいか、学生たちは様々なのですね。それでも、彼らから伝わってくるものはあるはずですね。学生たちも何か思いを持っているはずですから。あきらめずにチャレンジし続けること。教育は一生かけてやるものだと考えればいいと思うのです。リッツ・カールトン大阪ではボランティア活動がすごいんですよ。あるとき、日本赤十字社の、「献血が足りなくて困っている」という話を聞き、「じゃ、ホテルで献血活動をやりませんか?」ということになった。ホテルの宴会場を提供し、献血をされるお客様にケーキと紅茶を出して、実際に献血活動に協力しました。ホテルは人間教育の現場なんですね。人間力が強くなる。毎日の業務だけでなく、このような地域支援活動も知的な筋肉となってゆくのです。
渡瀬:大学も人間教育の場ですね。学生は教員を見る力をしっかりと持っていて、教員との信頼関係を求めています。人と人との結びつきが、やはり社会の原点だと思いますね。
高野:従業員もそうですね。顧客第一主義と言いながら、実際の営業活動が売上第一主義になってしまうとだめです。大切なお客様とのつながり、人と人との結びつきが原点です。このことを意識し続ける力が必要なのです。油断すると、すぐに軸がブレてしまいますから。
渡瀬:そこなんですね。学生第一主義もお題目だけではだめなのです。
高野:1対1の向き合い方は、大学生ならできるはずです。そして、学生から相談を受けると、教授も気持ちや向き合い方が変わったりしますよね。学生同士でもそうです。
渡瀬:学生と教員と職員が交わる広い意味での社会で、お互いの思いを伝えるために、よいアドバイスがあれば、最後にお聞かせ願えるでしょうか。
高野:やはり、直接メッセージを伝えることだと思います。教育する側に対しても、学生たちに対しても、自分達の思いをしっかり伝えることは大切です。まだ新しく、それにマンモス大学ではないということですから、それができる強みがあります。もし、1日50人の学生さんと話をして、それを200日続けても思いが伝わらなかったら、そのときに反省材料を探せばいい。直接伝えることができる規模ですから、そんな心配は無用でしょう。学長と話す機会が日本一多い大学なんて、いいじゃないですか。
渡瀬:たしかに、私の部屋には学生がよくやってきます。これからも「学生第一主義」の本学の理念を、私の言葉で、私の思いで、学生たちに伝えていこうと思います。本日は、どうもありがとうございました。
2007.10.29